CCSのCO2分離・回収過程で,アルカノールアミン(アミン)類の高濃度水溶液が使用される.そこで,基本的化学構造に相違のある第一アミンのDGAと第三アミンのMDEAを対象に,CO2を飽和した際の腐食性について検討した.低濃度では両アミンの腐食性に相違は認められるのに対し,DGAでは濃度の増加とともに腐食性が上昇した.MDEAはCO2を重炭酸イオンとして吸収し,一方,高濃度DGAは主としてカルバミン酸イオンとして吸収する.そのカルバミン酸イオンが強いキレート作用を有することにより,高い腐食性が発現するとの結論を得た.金属イオンと5員環のキレート化合物を生成し得ない第一アミン類の腐食性は高くないことを確認した.
超臨界CO2環境下での13%Cr鋼の腐食挙動の検討結果を中心に,ステンレス鋼の既往の検討結果をまとめた.13%Cr鋼の腐食度に与える超臨界CO2の影響はガスCO2と同等または小さくなった.圧力20MPa以上の超臨界CO2の場合は孔食を発生させやすかった.超臨界CO2に45kPa O2が存在するとすきま腐食が認められたが,4.5kPa O2ではMoを添加した低炭素鋼のB鋼ですきま腐食は認められなかった.B鋼は超臨界CO2環境のすべての試験でもCO2ガス環境と同様にMoが無添加のA鋼に比べ良好な耐食性を示した.加えて,そのほかのステンレス鋼を用いた試験やNO2,SO2などの不純物の影響,超臨界CO2環境そのものに関する検討状況について文献をレビューし,解説する.
CCSにおけるCO2輸送や注入段階で使用するCO2インジェクションポンプの構造および材料選定上の注意点を概説する.構造設計に際しては,ポンプ内部におけるCO2密度変化の影響に考慮する.CO2は粘性が低いため,摺動部品の選定や表面改質に注意が必要となる.水分や不純物が一定濃度以上含有すると腐食性が問題となるため,ポンプ部品に使用する材料選定に注意が必要となる.実際のプラントへの納入実績も紹介する.
CCSにおけるCO2の地中貯留に関して,廃坑井の残存ケーシング鋼管およびセメントプラグの安定性を調査することは,漏洩の可能性を評価するために重要である.CCSを実施した場合に貯留層内のCO2が廃坑井に到達することを想定して,廃坑井を構成する材料である,ケーシング鋼材およびセメントとCO2との化学反応(腐食)についての最近の検討例を紹介する.
2014年に東大寺敷地内において発見された本坊鋳鉄断片について,同大湯屋鉄湯船(重要文化財)との異同分析を行った.両者のCu/Fe比から,本坊鋳鉄断片は鉄湯船に比べCu/Fe比が1桁低く,両者は異なる組成であることが考えられた.また,鉄湯船より剥離した鉄錆断片試料について錆成分の特定をXRDにより行ったところ,Cl-存在下で形成されるβ-FeOOH: Akaganeiteが錆成分の一つとして同定され,さらにβ-FeOOHは、表面錆だけでなく,地鉄内部にも生成していることを確認した.
著者らは先行研究でAl-Zn多孔質焼結板と繊維シートを用いることで,鋼部材を大気で犠牲陽極防食する技術を開発した.また,本技術を腐食した鋼材に適用する際に生じる腐食生成物の還元反応のメカニズムについて検討した.本研究では犠牲陽極材としてAl-Zn合金鋳造板を用いた場合の防食性能を明らかにするために,組成の異なるAl-Zn合金鋳造板を用いたモデル試験体の室内試験と飛来海塩環境における大気暴露試験を行った.