カンボジアにおける炭素鋼の大気腐食挙動が,都市(プノンペン)および海洋(シアヌークビル)での1年の暴露試験によって調べられた.形態学特性および結晶構造の調査,および腐食生成物の断面観察が実施された.プノンペンおよびシアヌークビルの年間腐食速度は,それぞれ約9μmy―1および27μmy―1であった.ISO9223の腐食性分類によると,プノンペンは,「腐食性の低い大気」(C2カテゴリー)として分類されたが,シアヌークビルは「腐食性が中間の大気」(C3カテゴリー)として分類された.シアヌークビルでの激しい腐食は,ここでの海洋性大気からもたらされる飛来海塩粒子に由来する高濃度のCl―と長いぬれ時間による.これに対して,プノンペンの大気は小量の化学種を含み,ぬれ時間も短かった.プノンペンにおけるさび層は,シアヌークビルのそれより密着性があり緻密であった.そのため,プノンペンにおける金属の耐食性は,シアヌークビルの大気より高かった.