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論文
炭素鋼の自己不働態化に及ぼす淡水中へのホウ酸塩添加の影響
小澤 正義今井 智康明石 正恒
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2018 年 67 巻 10 号 p. 426-434

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抄録

本研究では,東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における燃料デブリ取り出し時における原子炉格納容器の炭素鋼の健全性評価に関する知見を整備することを目的として,自然浸漬試験における自然腐食電位の経時変化測定及び試験前後の水の分析結果に基づき,炭素鋼の自己不働態化挙動に及ぼすホウ酸塩投与の影響を評価した.その結果から,炭素鋼の自己不働態化指数(Self-Passivation Index, SPI);

SPI=(0.5[SO42-]+[Cl])/([HCO3]+14[B(OH)4]E

により自己不働態化傾向を推定できる手法を提示した.ここで,[B(OH)4]EはB(OH)4当量(B(OH)4 equivalent);

[B(OH)4]E=[M-Alk]+[HCO3]

として求められた.

すなわち,ホウ酸塩を含む溶液環境における格納容器の炭素鋼の腐食挙動は五ホウ酸ナトリウム投与濃度,M-アルカリ度,硫酸イオン濃度,塩化物イオン濃度及び炭酸水素イオン濃度により,炭素鋼の自己不働態化傾向を推定できる.この手法によると,SPIが0.282未満の場合炭素鋼は自己不働態化する.

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© 2018 公益社団法人 腐食防食学会
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