2018 年 67 巻 12 号 p. 507-512
溶射材料のAlにSiを添加することにより,Al溶射(TAS)の皮膜欠陥での素地鋼の腐食を抑制できる可能性があると考えた.Al-5SiあるいはAl-12Si 合金を溶射し,鋼素地に至る円盤状の人工欠陥を加工した鋼板試験片を作製した.比較のため,純度の異なる2種類のAlならびにAl-5Mg合金溶射皮膜の試験片を作製した.沖縄での屋外暴露試験後,欠陥部に生成したさび層と素地鋼界面の電荷移動抵抗をEISで検討した.Al-5SiやAl-12Siが溶射された試験片の同界面の電荷移動抵抗は,AlやAl-5Mgと比較し高かった.大気腐食によって皮膜から溶出するSiやAlの作用により,保護性に優れたさび層が形成されたと推測される.Al-5SiおよびAl-12Siの溶射皮膜は,鋼素地への密着強度の点でもAlやAl-5Mgと比較し優れていた.