2019 年 68 巻 12 号 p. 347-354
塩化物イオンを含む液滴下で発生した孔食を任意時間成長させた後に,その成長を自動停止させるシステムを構築した.このシステムを用い,硫黄(S)濃度の異なるオーステナイト系ステンレス鋼の,大気腐食環境における孔食挙動を調査した.ステンレス鋼中のS濃度によらず,孔食がマンガンサルファイド(MnS)介在物を起点として発生することを確認し,その後の活性溶解域の成長挙動も,S濃度依存性がないことを明らかにした.また,これらの試料に乾湿繰り返し試験を行ったところ,S濃度の増加により液滴中のMnS介在物の存在確率が増加するため,孔食発生確率も増加することがわかった.ただし,起点はS濃度によらずMnS介在物であるため,孔食発生時の塩化物イオン濃度にはほとんど差が現れなかった.一方で,発生した孔食の再不動態化挙動はS濃度に強く依存することが明らかになった.