2019 年 68 巻 6 号 p. 143-147
ナノ窒化物層の生成を期待して硝酸-硝酸塩溶液中でカソード分極(ECN処理)されたSUS445J1ステンレス鋼(通常材,微細化材)を,カーボンペーパー(GDL)との接触抵抗,分極挙動,表面の化学状態およびセパレータとして用いたときのPEFCセル性能の観点から評価した.この処理によってステンレス鋼とGDLとの接触抵抗は減少し,微細化材でより効果が高かった.分極試験の結果,処理前後で耐食性は維持された.XPS分析によれば,ステンレス鋼表面に窒化物のピークが認められ,導入された窒化物は微細化材でより安定していた.この処理を施したSUS445ステンレス鋼(微細化材)をセパレータとして単セル発電試験を行った結果,グラファイトセパレータを用いたセルに匹敵するセル性能を示したことから,窒化SUS445J1ステンレス鋼(微細化材)はPEFC用セパレータ材として極めて有用であると考えられる.