本研究では,二相ステンレス鋼の耐孔食性に及ぼすTa添加の影響を,脱酸剤および脱硫剤として使用されるAl,Caを添加した系と添加していない系の両方にて調査した.両系において,Ta添加による耐孔食性向上が確認されたが,Ta添加の作用機構はAl,Ca添加の有無によって異なることが示唆された.Al,Caを添加していない場合,MnSが孔食起点として作用するが,Ta添加によってMnSが電気化学的に安定な(Ta,Mn)酸硫化物に改質されることで孔食起点が低減し,耐孔食性が向上した.一方,Al,Caを添加した系では,CaS,(Al,Ca)酸化物といった溶解性の介在物が孔食起点となるが,Ta添加によってこれら介在物は電気化学的に安定なTa窒化物層に被覆される.溶解性介在物を孔食起点とする孔食の進展がTa窒化物層によって抑制された結果,耐孔食性が向上したと推察された.