本研究では,気液交番環境における炭素鋼の腐食速度に及ぼす海水成分の影響を調査し,更に人工海水濃度により異なる炭素鋼の腐食機構を明らかにすることを目的とした.その結果より,純水から200倍希釈人工海水までの薄い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は加速し,20倍希釈から無希釈人工海水までの濃い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は減少することを見出した.濃度の高い人工海水中で炭素鋼の腐食が抑制された理由は,腐食による表面近傍のpH増大に伴い人工海水中のMgやCaイオンが反応界面に析出して表面を覆うことで,酸素還元反応が抑制されたためであると考えられる.