2021 年 70 巻 1 号 p. 10-17
本研究では,鋼板合わせ部における腐食劣化モデル構築を目的に,すきま構造部における鋼板の腐食挙動をNaCl水溶液中における浸漬試験により調査した.すきま構造は,鋼板上にすきま形成材を配置することで構築した.すきま形成材の半径と鋼板との距離を変化させた.浸漬試験の結果,鋼板の腐食形態および腐食減量はすきま形状に依存した.一方,腐食電位は,すきま形状にわずかに依存し,溶存酸素の拡散限界電流域にあった.これらの結果から,鋼板の腐食は,すきま内外において酸素濃淡電池が形成することで,すきま内の鋼板上がアノード,すきま外の鋼板がカソードとなるにより進行することが示された.さらに,すきま部における溶存酸素濃度のFEM解析によって評価した腐食減量が,本研究で得られた傾向と一致することが示された.