Zairyo-to-Kankyo
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解説
海水の混入した流水中における炭素鋼の腐食挙動
藤原 和俊
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2021 年 70 巻 12 号 p. 431-435

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抄録

福島第一原子力発電所の使用済燃料プールでは,非常冷却措置として一時的に海水等が注入されたため,様々な腐食に起因するリスクへの対応が課題であった.炭素鋼主体の冷却水配管で主に考慮しなければならないのは,塩分を含む流水中での腐食である.本報では,海水成分を含む流水中での炭素鋼の腐食挙動に関する関連の研究を解説した.希釈人工海水中では,試験時間とともに炭素鋼の腐食速度が大幅に低下し,流速による腐食挙動の違いは比較的小さい.現在の使用済燃料プール冷却系の水質においては,硝酸ナトリウムや五ホウ酸ナトリウムなどの無機腐食防止剤の添加は,炭素鋼の腐食抑制に効果があると考えられる.但し,腐食制御に必要な臨界濃度に対する流速の影響は,両者で異なり,亜硝酸イオンの臨界濃度は流速の影響を受けるが,五ホウ酸イオンの臨界濃度は流速の影響を受けにくいと言える.水の浄化は,さまざまな流動条件下で炭素鋼の腐食抑制に効果があると考えられる.

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© 2021 公益社団法人 腐食防食学会
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