2021 年 70 巻 12 号 p. 468-473
東京電力福島第一原子力発電所の汚染水中の腐食環境の評価においては,建屋内が放射線環境下にあるため,水の放射線分解(ラジオリシス)により生成するH2O2等の酸化剤の影響を考慮する必要がある.ラジオリシス過程及びそれにより発生する酸化剤の生成量は水質や放射線の線質などに依って変化する.そのため,この10年間,水の放射線分解に寄与しうる様々な要因(海水成分,酸化物の表面の作用,α核種等)を対象に研究が進められてきた.本稿では,汚染水中の腐食環境のより深い理解に繋げるため,これらの要因のラジオリシスへの影響について解説する.