Zairyo-to-Kankyo
Online ISSN : 1881-9664
Print ISSN : 0917-0480
ISSN-L : 0917-0480
速報論文
高温硫酸分解ガス環境下におけるステンレス鋼及びNi基合金の耐食性評価及び表面皮膜構造解析
広田 憲亮竹田 貴代子橘 幸男正木 康浩
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 70 巻 3 号 p. 68-76

詳細
抄録

熱化学水素製造法(ISプロセス)の硫酸分解反応容器を想定した高温硫酸分解ガス環境下において,ステンレス鋼及びNi基合金の耐食性評価を実施した.その結果,100時間の腐食試験ではSiを2.4%含有したNi基合金は,腐食速度が小さく,優れた耐食性を示したほか,Alを3%含有したフェライト系ステンレス鋼(3Al-Ferrite)は,腐食速度が指標とするSiCの腐食速度(0.1 mm/year)を下回る優れた耐食性を示した.一方,3Al-Ferriteの腐食生成皮膜と同じコンセプトで,Al2O3皮膜を材料にプレフィルミングしたNi基合金の腐食速度は,3Al-Ferriteに対して大幅に大きくなった.これらの酸化皮膜/母材界面の断面でEPMA分析を行った結果,2.4Si含有Ni基合金ではSi酸化皮膜が形成されていたが,長時間の腐食試験中にSi酸化皮膜に欠陥ができ,腐食環境から酸化皮膜を介して母材粒界へのS侵入が確認された.一方で3Al-Ferriteでは,薄い均一なAl2O3皮膜が形成されており,粒界へのS侵入は確認されなかった.またAl2O3皮膜をプレフィルミングしたNi基合金では,Al2O3皮膜に欠陥ができ,母材粒界へSが侵入していた.3Al-Ferriteに生成した腐食生成皮膜とプレフィルミングしたAl2O3の違いをX線回折で解析した結果,3Al-Ferriteの皮膜はα-Al2O3のみからなるのに対し,プレフィルミングしたAl2O3はα-Al2O3とγ-A2O3が混在していることが分かった.これらの結果により,3Al-Ferriteの良好な耐食性は,緻密なα-Al2O3が早期に母材表面に均一形成されたことによるものと推察される.

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 腐食防食学会
前の記事 次の記事
feedback
Top