材料と環境
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論文
連続定電流ステップ法による各種ステンレス鋼のすきま腐食進展性評価
松橋 亮野瀬 清美松岡 和巳梶村 治彦
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2021 年 70 巻 5 号 p. 161-169

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抄録

自然海水環境におけるステンレス鋼のすきま腐食進展が定電流的に進行するという事実に則り,材料のすきま腐食進展性を評価する電気化学的手法として,「連続定電流ステップ法」(Continuous Current Step:CCS法)を提案し,同法を用いて種々のステンレス鋼のすきま腐食進展性を検討した.その結果,CCS法によって,各種汎用ステンレス鋼の電位(ECCS)と電流密度(i)のデータ対を取得し,本関係を減衰指数関数に当てはめ定式化した.このECCSi関係は,すきま腐食が進行している状態でEOUTがほぼ一定値に落ち着くと,すきま内の閉塞状態における金属の電位(=EOUTi・R)に応じて生じるanolyte中での金属の電位と活性溶解電流密度との関係を反映したものと推定された.また,金属溶解量が十分に小さい,i=1×10-5 A・cm-2(≒0.1 mm・y-1)をすきま腐食の進展が実質的に停止する閾値とし,iがこの電流密度閾値に対応する電位を再不動態化電位:ER(CCS)として各種汎用ステンレス鋼の値を得た.さらに,別途,上記ECCSi関係におよぼすCr量,Ni量,Mo量およびCu量の影響を系統的に検討した結果,ER(CCS)はステンレス鋼を構成する個々の合金元素に固有のbiとその合金元素量[Mi]の積和(一次多項式)で示すことができ,以下の耐すきま腐食進展性指標CCR(Crevice Corrosion Propagation Resistance Index)を導入した.

CCR=[Cr]+0.95[Ni]+0.74[Mo]+2.03[Cu]

ER(CCS)CCRの増加とともにほぼ直線的に貴化し次式の関係で近似できる事を示した.

ER/mV=-317+13.75・CCR

これより,種々の組成のステンレス鋼のER(CCS)CCRによって一元化され,合金元素成分の観点からER(CCS)を統一的に論ずることが可能となった.

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© 2021 公益社団法人 腐食防食学会
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