防錆剤を含有する市販の凍結防止剤水溶液中における,鋼の防錆機構を明らかにするため,ピロリン酸Na,グルコン酸Na,クエン酸Naをそれぞれ添加した岩塩水溶液中において168時間の浸漬試験を行った.浸漬試験前後の試料重量変化では,それらの溶液中における鋼の重量減少は,岩塩のみの水溶液の場合と比較して,いずれも小さかった.ピロリン酸Naを含む溶液に浸漬した鋼試料において,試料表面のSEM観察より,腐食が抑制された部分には膜が生じており,そのEDS分析から,その膜はO,Fe,Pと少量のMg,Caを含んでいた.またFT-IR測定では,PO43-構造に対応する吸収ピークがあった.この表面に形成される膜は,既に報告のある防錆剤を含むNaCl水溶液中で生じる吸着物質による膜とは異なり,不溶性リン酸化合物の沈殿による膜と推定された.