著者らは,三点曲げスプリング鋼の遅れ破壊がショットピーニングあるいは酸化物セラミックの溶射によってどのように抑制できるかを調べた.はじめに,ピーニングされたバネ鋼の特性と遅れ破壊感受性におよぼす水素供給法(水素チャージ法)について調べた.次に,通常の曲げ試験片の浸漬試験法(CIT)で下限界歪を決める方法を評価する.そのあと,水素を吸蔵させた試験片に段階的にひずみを増加させながらAEを測定して遅れ破壊下限界歪を測定する方法(SSI-AE method)を提唱する.水素チャージ法と試験片の強度レベルによって,ピーニングによる抑制効果がみられる場合と見られないケースを紹介し,CITとSSI-AE法における問題点と有利性を議論した.ショットピーニングが遅れ破壊に対する有効な抑制対策にならない場合については,導電性チタニア溶射による水素侵入量の抑制を試み,いかにこの方法が下限界歪を改善できるかを実証した.