従来の電気化学的手法は,電流経路を確保することが困難なため,大気腐食への適用は困難とされてきた.近年,大気環境下での腐食モニタリングにおいて,その問題を克服するために多くのセンサや測定方法が提案されている.本レビューでは,著者らによって開発されたACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサを含む,大気環境の腐食性をモニタリングし評価するための手法や技術を紹介する.ACMセンサについては,センサ出力(I)の大きさと経時変化を解析することによって,結露・乾燥・降雨の各期間の検出およびそれらの時間(Train, Tdew, Tdry,)を測定ができることを示した.また,予め求めておいたI-RH校正曲線を用いて,海塩付着量(Ws)を推定できることも示した.それら環境因子(RH, Ws, Train, Tdew, Tdryなど)の炭素鋼,亜鉛めっき鋼板およびステンレス鋼の腐食挙動におよぼす影響について述べた.さらに,それらの環境因子とACMセンサ出力とから,炭素鋼の腐食速度を推定する式を提案した.