2024 年 73 巻 8 号 p. 188-193
水質が低下したイオン交換水を用いて溶融亜鉛めっきの浸漬試験を実施したところ,腐食速度が抑制された.さらに,浸漬試験後に金属光沢を維持していた箇所について蛍光X線分析を行ったところ,水質低下後のイオン交換水を用いて浸漬試験を行った方がめっき表面にSiが多く検出されたことから,イオン交換水に含まれるSiがめっきの保護皮膜形成に寄与したと推察された.Si以外の不純物の影響を除外する目的で,蒸留水とケイ酸ナトリウムを用いてケイ酸イオン濃度を調整した腐食液を調製し浸漬試験を実施したところ,水質低下後のイオン交換水を用いた試験の結果を再現し,ケイ酸イオンの存在下では腐食が抑制されることを明らかにした.また,浸漬試験ならびに各種分析の結果,ケイ酸イオンを含む腐食液を用いた場合,室温と比較してより高温の60℃の方が腐食物層に多くのSiが取り込まれることでZnのアノード反応が抑制され,腐食が抑制されることも判明した.