水質が低下したイオン交換水を用いて溶融亜鉛めっきの浸漬試験を実施したところ,腐食速度が抑制された.さらに,浸漬試験後に金属光沢を維持していた箇所について蛍光X線分析を行ったところ,水質低下後のイオン交換水を用いて浸漬試験を行った方がめっき表面にSiが多く検出されたことから,イオン交換水に含まれるSiがめっきの保護皮膜形成に寄与したと推察された.Si以外の不純物の影響を除外する目的で,蒸留水とケイ酸ナトリウムを用いてケイ酸イオン濃度を調整した腐食液を調製し浸漬試験を実施したところ,水質低下後のイオン交換水を用いた試験の結果を再現し,ケイ酸イオンの存在下では腐食が抑制されることを明らかにした.また,浸漬試験ならびに各種分析の結果,ケイ酸イオンを含む腐食液を用いた場合,室温と比較してより高温の60℃の方が腐食物層に多くのSiが取り込まれることでZnのアノード反応が抑制され,腐食が抑制されることも判明した.
金属材料の水素脆化機構を明らかにするために,金属組織に依存した微視的な水素分布をその場検出する技術が求められている.本研究では,多結晶純ニッケル箔中の水素拡散の微視的な分布を,イリジウム錯体膜を用いて可視化することに成功した.ニッケル箔中の水素流束は,ランダム粒界で大きく,粒内や対応粒界では小さいことがわかった.
建築や土木分野で用いられる土壌中の腐食速度は,年間0.02 mmとしており,土壌に依らず一律の値を用いている.しかし,土壌は粒度や含水率,化学組成,pHなどが異なり,これにより腐食速度は異なると考えられる.本研究では,土壌中の溶存酸素拡散速度が土壌腐食に与える影響を調査することを目的に,各土壌,各含水率における溶存酸素の拡散係数の測定と各溶存酸素濃度における交流インピーダンス測定による電荷移動抵抗の推定を行った.
土壌中の酸素拡散経路は,主に土壌中に分散した大気であることが示唆された.また,土壌中の酸素拡散係数は,土壌に依らず気相率と相関していることがわかった.したがって,接液面積を考慮しなければ,気相率が大きく,水分量が少なくなるにつれて,土壌中への酸素の供給速度が速くなり,土壌中の腐食速度が速くなることがわかった.