2026 年 75 巻 7 号 p. 155-160
製鉄所の鋼構造物は腐食の経年劣化が著しい.特に,製銑ダストと呼ばれる原料炭,コークス,鉱石,および焼結鉱の粉塵が堆積した場所では,厳しい腐食が観察されている.腐食を起因とする設備故障や倒壊を防ぐには,残存板厚と腐食速度の関係から算出可能な残存耐力の予測から,優先順位を付けた設備の保守保全を実施する必要がある.そのためには,まず製銑ダスト下の鋼構造材料の腐食挙動を明確にする必要がある.
そこで,暴露,およびラボ試験において各種ダストの腐食量を評価したところ,製銑ダストの中でもコークスダストの腐食性が著しく厳しいことが分かった.分極測定から,コークスが鋼構造材料と接触し,カソードとして働くことで,ガルバニック腐食が発生したためと分かった.これは乾留により,完全黒鉛化には温度が低いものの,少なからず黒鉛化が進行したため,コークスにガルバニック腐食を進行させるほどの電気が流れるようになったためと推定している.
また,この環境で耐食材料としてSUS304や亜鉛めっき鋼板(GI)を使用した場合,SUS304は不働態皮膜が破壊されるリスクを有し,亜鉛めっき鋼板(GI)は,亜鉛腐食生成物の保護性が効果を発揮できないほど腐食が厳しかった.よって,これらの耐食材料はコークスダスト下においては適さないことが分かった.