抄録
火力発電プラントの毎日起動停止や週末起動停止などの運用により低圧蒸気タービン最終段近傍部のブレード埋め込み部のすき間部では蒸気中に存在する低濃度の腐食性化学種が濃縮して腐食の促進が懸念される. 代表的な低圧蒸気タービン材料について4種類の応力腐食割れ試験と電位測定試験を行い, 応力腐食割れ感受性に及ぼす腐食性化学種である塩化物イオン, 硫酸イオンおよびナトリウムイオンと溶存酸素の複合した場合の影響を評価した.
ダブルU曲げSCC試験法によるSCC感受性に及ぼす腐食性化学種の影響は, 塩化物イオンが最も高く, 硫酸イオン, ナトリウムイオンの順にSCC感受性が小さくなる. 特に, 溶存酸素と塩化物イオンが共存する場合には, いずれの鋼種ともSCC感受性が顕著に加速される. 不働態皮膜の特性とSCC感受性との間には明瞭な関係があり, 材料中のCr含有量は不働態皮膜の特性とSCC性を支配する. すなわち, Cr2O3の不働態皮膜の生成によってSCC感受性が小さくなることが示唆された.