抄録
中間貯蔵施設に用いるコンクリートキャスクのキャニスタは, 長期間にわたる貯蔵期間の後期には海塩粒子を含む湿潤環境下にさらされる. このため, 候補材として耐食性が高く, かつ20~50mmの幅広の熱間圧延材の現状の技術で製造が可能な2相ステンレス鋼 (材料D) およびオーステナイト系スーパーステンレス鋼 (材料A) を候補材として選定した. そこで長期間での耐SCC性を確認するため, M. Mayuzumiらによって実施された最長16000hに及ぶ高温湿潤環境で長期ばく露中に破断は生じなかったものの侵食が見られた定荷重応力腐食割れ試験片をもらい受け, SCCのき裂発生及び進展データの採取を実施し, 基礎データを得ることとした. 得られた結果は以下のとおりである.
1) 微小なSCCが観察されたのは, D材・A材とも80℃だけで, 実機で実際に湿る温度と予想される70及び60℃でのき裂発生はなかった. き裂発生は前者が15000hで1.1σy以上, 後者は1000h以上で1.5σyの高応力負荷材だけであった.
2) 両材ともき裂進展速度は非常に遅い.
3) SCCが認められた試験片の破面観察から, SCCの発生条件であるKI SCCを計算すると本研究ではD材が7MPa√m程度, A材が5MPa√m程度であった.