新耐食ステンレス鋼 Type 310MoCuのシングルループ排煙脱硫装置付設の石炭焚き火力発電プラントへの適用を目的とし, 同鋼の耐食性を各種ステンレス鋼及びNi基合金と比較することにより評価した. 硫酸腐食環境の耐全面腐食性の向上には耐全面腐食性指数Isc=-0.6Cr+Ni+1.5Mo+7.5Cu+122Nが40以上となる合金元素添加が目安となること, およびCuの添加が有効であることを明らかにし, 新開発鋼の適用可能性を確認した. さらに, クラッド化の適用を検討し, クラッド圧延後の冷却速度と耐食性の関係を調査した. 冷却速度が0.4K/s以上において, 結晶粒界での金属間化合物の成長を抑制することができ, 固溶化熱処理材と同等の耐食性が得られることを明らかにした. 最後に, クラッド鋼板の実験室試作により, 溶接部も含めて十分な耐食性を有することを確認した.
