材料と環境
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鋼製大型水槽を用いた嫌気性海水の水質の追跡
硫化物を含む嫌気性海水環境中の鋼構造物の腐食に関する研究 (第1報)
伊藤 大輔朝倉 祝治
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2005 年 54 巻 6 号 p. 282-287

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抄録
硫化物を含む嫌気性環境中の鋼構造物の腐食に関して, 30m3鋼製水槽を用いた嫌気性海水の水質の追跡を行った. 調査は溶存酸素濃度, 硫化物濃度, 鉄イオン (Fe2+) 濃度, 硫酸塩還元菌数, 酸化還元電位, pHの測定を394日間行った. 溶存酸素濃度は, 約半年で0ppmとなり嫌気性環境へと変化した. その時期から硫酸塩還元菌が検出され, 硫化物濃度が急激に増加し11月には最大1.38ppmに達した. しかし, 硫化物濃度は1月から急激に低下し3月には0.03ppmとなった. 密閉環境であることから, 他の物質へ変化したと予測された. 硫化物濃度と酸化還元電位の間には, 相関係数r=-0.88という強い相関が認められた. 測定された酸化還元電位と熱力学データの比較によりS/H2S, FeS2/FeS, H2S, S/HS-の反応系が近いことが分かった. また, 水槽には250μm膜厚タールエポキシ塗装が施されているが, 鉄イオンの溶出が確認された. 以上より水質調査の結果は, 腐食機構の解明または防食技術の開発に役立つものと期待される.
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© 社団法人腐食防食協会
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