日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
膀胱原発印環細胞癌に対してTS-1+CDDP療法が有効であった一例
北風 宏明松下 慎岡田 紘一湊 のり子森 直樹吉岡 俊昭
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2017 年 108 巻 4 号 p. 204-209

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抄録

66歳男性.約3カ月前から頻尿と下腹部違和感を自覚したため2015年7月に当科を受診した.膀胱鏡で左側壁~前壁に隆起性病変を認めたため経尿道的切除を施行した.病理結果は印環細胞癌であり精査の結果膀胱原発印環細胞癌,cT3N0M0と診断し膀胱全摘術の方針とした.しかし骨盤壁との癒着が強く膀胱全摘は断念,両側尿管皮膚瘻を造設した.右骨盤壁の生検で癌の浸潤を認めたためpT4N0M0と診断した.術後,2015年8月からTS-1+シスプラチン(CDDP)による化学療法を12コース,16カ月間施行した.

投与開始後,腫瘍マーカーは8カ月間低下傾向にあったが,8カ月以降は経時的な上昇を認めた.CT・MRIでは膀胱内腫瘍の増大や遠隔転移・リンパ節転移を疑う所見を認めなかったため,画像上は16カ月間SDであった.

化学療法施行中に大きな副作用は認めず,2017年1月現時点では明らかな再発なく経過している.

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© 2017 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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