2025 年 4 巻 1 号 p. 45-50
〈はじめに〉
重複障害を呈した心不全患者では,過負荷に伴う心事故や心不全増悪が懸念され負荷量の設定に難渋する.今回,心不全を併存した大腿切断症例を通して,重複障害患者の管理方法について検討した.
〈症例提示〉
72歳女性,基礎疾患は心不全と下肢閉塞性動脈硬化症,腎不全(人工透析)であった.血栓による急性血管閉塞により大腿切断術を施行し,術後リハ開始となった.義足を希望されたため,心不全管理と義足作成に向けたリハ管理が必要となった.リハ中の心事故の管理には,心機能は有意残存狭窄があり,LVEFは59%,不整脈はないため,心電図モニタリングで虚血を管理した.また心不全管理には息切れ,疲労感,浮腫などの症状とリハ後から翌日までの不眠,食欲不振,疲労感の残存をモニタリングした.また切断による循環血液量の減少や,透析による自律神経障害も想定されたため,透析日は断端管理など低負荷で実施し,非透析日に運動療法を強化した.回復期転棟以降も上記モニタリングを継続し,心不全悪化なく退院となった.
〈結論〉
重複障害を呈した心疾患患者には,心機能に基づいたリスク管理と経過上の心不全増悪予防管理を分けてモニタリングすることが,身体機能の改善と病態増悪予防に重要であることが示唆された.