2016 年 61 巻 p. 19-22
イネにおいて,Ehd1は基本栄養成長性に関与する遺伝子であり,出穂期制御の中心的な役割を担う遺伝子であることから,Ehd1と他の出穂期遺伝子の相互作用を解明することは重要である.しかし,これまでの研究では遺伝背景の異なる材料を用いているため,出穂期遺伝子間の相互作用の評価は困難であった.本研究では銀坊主にγ線を照射して得られた出穂期突然変異系統とそれらを相互交配して作出した多重変異系統を含む31系統を供試した.全供試系統の短日条件での到穂日数(DTHSD)を基本栄養成長性の指標とするともに,短日条件と長日条件での到穂日数の差(PSPL-S)を感光性の指標とした.Ehd1をもつ系統ではPSPL-Sの値に関わらずDTHSDは一定であったのに対し,ehd1をもつ系統ではPSPL-Sが大きくなるにつれてDTHSDが小さくなる傾向が認められた.このことから,Ehd1をもつ系統はEhd1の基本栄養成長相(BVP)短縮効果により最短日数で出穂するため,感光性遺伝子が基本栄養成長性に及ぼす効果が被覆されるのに対し,ehd1をもつ系統では出穂促進効果が喪失するため,感光性遺伝子のBVPへの効果が顕在化すると考えた.