作物研究
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論文
野生イネOryza rufipogonと栽培イネO. sativaの戻し交雑自殖系統を用いた節からの出芽・出根能力およびひこばえの発生能力の評価
池本 麻衣大八木 徹弥Thanh Pham Thien石川 亮石井 尊生
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 61 巻 p. 13-17

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抄録
イネにおける1年生と多年生の分化はこれまでイネの遺伝学者や生態学者にとって大きな関心事のひとつであった.本研究では,生殖に関係する形質のうち,節からの出芽・出根能力およびひこばえの発生能力に焦点を当てた.これらの形質は,多年生の性質を持つ栽培イネOryza sativa Nipponbareと1年生の野生イネO. rufipogon W630の間の戻し交雑自殖系統によって評価した.まず,登熟前と登熟後の時期に,戻し交雑自殖系統の植物より上位第1節および第2節を収集した.個体あたり5組の節は3週間水に半分浸した状態で保った後,節からの発生した芽と根を調査した.戻し交雑自殖系統の植物の第1 節からはどちらの時期でも芽の発生がほとんど見られなかったが,それらの多くは第2節からの出芽能力を持っていた.出根能力は登熟後の第1節にはほとんど見られなかったが,登熟前のほぼ半数の第1節からは根の発生が見られた.また,多くの戻し交雑自殖系統の植物の第2節からはどちらの時期でも根の発生が見られた.戻し交雑自殖系統における連続的な頻度分布は登熟後の第2 節からの出芽・出根能力に関してみられたため,これらのデータを基にQTL解析を行ったところ,有意な遺伝子座は検出されなかった.この結果は,水温などの環境要因が形質評価に影響したのではないかと思われる.次に,ひこばえの発生能力については,圃場に展開したもう1組の戻し交雑自殖系統を用いて,出穂後約60日に有効分げつに対するひこばえ数の割合を調査した.これらのデータを用いてQTL解析を行ったところ,第8 染色体上のRM25とRM44の間にLOD値が4.2のQTLが1つ検出された.このQTLの位置確認には,推定領域に関して染色体断片を置換した系統を用いた解析が今後必要となる.
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© 2016 近畿作物・育種研究会
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