抄録
キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)はヒユ科に属するアンデス地方原産の擬穀類である.子実は2-3mmと比較的小さいものの,その高い栄養価がFAO(国連食糧農業機関)において高く評価されており,世界的に栽培規模の拡大が進んでいる.さらにキヌアは優れた環境ストレス耐性を有しているため,イネやコムギなどの主要作物の栽培が不可能な乾燥地や塩害土壌においても栽培可能であり,食糧安全保障の観点からも注目されている.我々は,キヌアの優れた栄養特性や環境適応性に関わるメカニズムの解明を目指して,世界に先駆けてキヌアゲノムのドラフト配列を解読し,ゲノムデータベースを構築した.そして今回,ボリビアのウユニ塩湖畔で劣悪環境下におけるキヌアの栽培方法の現地調査,および聞き取り調査を行うことができた.本資料では,現地でのキヌアの栽培管理,生産性,および育種目標について報告する.またラクダ科家畜リャマ(Lama glama)を用いた耕畜連携とマメ科野生植物(Lupinus pubescens)などの土着遺伝資源を利用したキヌアの持続的生産への取り組みについても報告する.