日本の水稲育種群の遺伝的背景の変遷をゲノムレベルで調査したところ,近交系品種同士の交雑に起因して遺伝的多様性が時代とともに減少していることが明らかになった.今後生まれるさまざまな育種ニーズに対応するためにも,また量的形質の選抜効率を高めるためにも,育種集団内には多様な遺伝変異を保つ必要がある.著者らは,現状の育種母本から期待できる遺伝変異を最大限に抽出するための試みとして8品種からなる多系交雑集団を育成し,調査した表現型において広く多様性を包含することや籾長と籾幅の形質間相関が打破できる可能性を示した.また新たな試みとして,連鎖の打破に貢献することが期待できるゲノムシャッフリング集団や,遠縁遺伝資源に由来する変異の導入やdosageによる表現型効果の調整が期待できる4倍体系統群を作出して,それらの評価に取り組んでいる.