中国では 1979 年以降の計画経済体制にかわる双層経営体制(農家請負制)により,農家は農業の集約化を図ることが可能となり,より多くの年間収量とより高い利益を得るようになったが,農業の持続性は低下し環境問題を引き起こしてきた.そこで,中国の汚染湖のひとつである滇池の沿岸部において実施されている集約的農業システムにおける物質循環の実態を評価した.野菜の周年栽培では化学肥料と堆伯肥が,集約的畜産では濃厚飼料が大量に使用されていた.しかし,農業システム内で有効に利用されなかった投入資源の余剰が,地下水や河川水の高い硝酸態窒素などの環境問題を引き起こしていた.この様な実態に対して,集約的な地域農業システムにおいて収量を低下させないで栄養素収支を改善するための方策を提示した.それは,多毛作における収支バランスを改善するための土壌中硝酸態窒素濃度に応じた葉菜類への化学肥料投入量の削減,アブラナ科野菜連作圃場における施肥窒素吸収率を改善するための太陽熱土壌消毒によるアブラナ科野菜の根こぶ病制御,そして,汚染水対策のため湿地に栽植されたヨシの粗飼料化による農業システム内窒素循環の強化である.