2023 年 68 巻 p. 7-13
イタドリ(Fallopia japonica)は和歌山県内では山間地域を中心に食される郷土山菜であるが,近年,シカの食害等により山での採取量が減少している.このため,栽培に取り組む地域が増加しており,より効率的な栽培や活用を行うには,収穫量が多く,皮が剥きやすいなどの栽培・加工に適した優良系統苗の供給が望まれている.このような要望に応えるため,和歌山県内で収集したイタドリについて特性調査を行い,優良系統選抜を行うとともに組織培養による増殖に取り組み,現在,一般財団法人日高川町ふるさと振興公社バイオセンター中津(和歌山県日高郡日高川町高津尾 1052-1)(以下,(一財)バイオセンター中津)において優良系統苗の販売が行われている.また,イタドリの新たな活用に繋げるため,和歌山県工業技術センターおよび地域生産者である日高川町生活研究グループ連絡協議会美山支部イタドリ部会(以下,イタドリ部会)との共同研究により,機能性成分の分析と商品開発を行った.その結果,未利用部位であったイタドリの若芽の先や花,皮などにポリフェノールが多く含まれていることが明らかになり,これらの部位を活用したジャムペースト,ドレッシング,健康茶の 3商品を開発した.各商品は,日高川町内の産品販売所で販売中である.