抄録
本研究では、問題理解と問題文生成の関連に着目して,割合文章題の成績が上位と下位の子どもの文章題の理解過程のちがいを吟味した。小学6年生に線分図を要求する課題とそれと類似な問題文を生成させる課題を課した。分析の結果,両群の主な相違点として次の点が見い出された。1)基準量が比較量より大きい第3用法単純構造の問題に関して,上位群はこのタイプの問題を生成できるが,下位群はむしろ解決が困難な第3用法複雑構造の問題の生成が多かった。2)基準量が比較量より小さい第2用法複雑構造の問題に関して,上位群は問題を生成し,かつ,線分図表現できるが,下位群は問題を生成しても,正しい線分図がかけなかった。この結果は,下位群に,第2用法に比べて第3用法の問題に関する知識の構造化が不完全であること,および,基準量の取り方に関する知識の制約により割合関係の総合的な理解が困難であることを示唆している。