抄録
本研究は,空間把握能力において必要な視点の移動を認知科学的に分析することで生徒の空間的イメージ能力の実態を明らかにすることを目的としている。そのため次の三つの観点により調査した。(1)三次元図形における空間的イメージ化(2)二次元図形における空間的イメージ化(3)空間的イメージ化における,相対的な視点移動の心的操作である。その結果,以下のことが明らかにされた。1.単一の方向性においては,心的視点移動は可能であり,生徒は紙面上の図形を空間的にイメージすることができる。逆に,複数の方向性においては,困難を来すことが判明した。2.空間的イメージ化した事象の,全体的な視点移動の心的操作は可能であるが,部分的な心的操作は困難を来すことが判明した。3.中学校三年生は,認知機能的に,高次な視点移動の段階への過渡期であることが判明した。