日本教科教育学会誌
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音楽科における「感性の育成」の新たな意義に基づく音楽学習の方向
神原 陸男
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1999 年 22 巻 2 号 p. 29-36

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抄録

本研究は,平成元年の学習指導要領の告示以来,次第に新鮮さが薄れてきつつある「感性」という用語に新たな意義を吹き込み,これからの音楽学習のあるべき方向を具体的に提示しようとするものである。「感性」の新たな意義については,カントの先験的感性論から,感性と悟性をつなぐ「構想力」に着目し,感性が単なる感受性ではなく対象認識の入口としての思考力と直結していることを引き出した。更に,メルロ・ポンティの身体論から,感性が,対象認識の「まなざし」「指向弓」をもち,身体という統合体により世界と接しながら認識するという機能をもつことを引き出した。このことから,「感性の育成」が,「音楽の世界への価値を見出し,自らの音楽像を心に描く能力を更新すること」であると提言した。そのため,子供たちが本来もっている知的欲求に応じた「音楽の不思議の世界」等に関する題材構成が開発されるべきであることを具体例を示しながら提言した。

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© 1999 日本教科教育学会
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