日本教科教育学会誌
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22 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 妹尾 理子
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 1-10
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    実践的・総合的な教科とされる家庭科における住環境学習について,高等学校段階における授業の総合的な展開の可能性を探っていくことを目的とする。まず文献資料研究により学習理念の見直しを行い,授業計画を作成し,授業の実践とその検討を行った。授業計画にあたって,理念および実践方法に関連して,住環境学習の先進的事例を持つ英国の実践から示唆を得,文献を参照した。実践の結果,高等学校家庭科の住環境学習として,体験を重視した参加型の学習方法を採り入れ,住環境を評価する能力の育成をめざした多様な学習方法の採用により,生徒の認識に広がりが確認され,住環境に対する主体性の形成につながる学びとなることが確認できた。今後の課題としては実社会との接点を拡大していくことがあげられ,実践を通したさらなる研究が求められる。
  • 呉 軍
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 11-20
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,学校体育研究同志会の球技研究史の考察を通して,一般的に適用するスポーツ素材の教材化の方法を検討することと関連する課題を確認することである。同志会の研究上の出来事より,その研究史を4段階に分け,それぞれの段階の教材化についての「解決したい問題」,「特徴」,「具体的教材例」の考察を行った。その結果,以下の点が明らかになった:第一に,すべての子どもに視点を置き,子どもの発達状況,関心,意欲を出発点として,基礎技術及び指導の系統を考えていること。第二に,教えたい内容を確実に子どもに習得させるために,子どもの発達状況や学習の現状を考えると不都合と考えられる要素を制限し,再構成するという視点が貫ぬかれている。第三に,スポーツの共通的技術要素を取り出し,新しい球技を創造するという視点が内包されている。第四に,グループ学習を通じて,技術指導と民主的集団づくりを統一するという課題を一貫して追求する視点である。それでも,「戦略・戦術」を中核とする教科内容と捉える授業実践において,教師は,球技の「戦略・戦術」とはどういうものか,どのように提示するか,また,「戦略・戦術」を実行するための運動技能をいかに習得するかが課題として残っていると思われる。
  • 松原 道男
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 21-27
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,生徒の概念を表現する方法として,ホップフィールドモデルを用いることの妥当性について明らかにすることを目的とした。中学校第3学年61人を対象に,岩石の分類に関する質問紙調査を行った。生徒の回答からホップフィールドモデルを作成し,そのモデルから,他の問題に対する生徒の回答を予測した。その予測と実際の生徒の回答との一致度から,モデルの妥当性を求めた。その結果,3分の2以上の生徒の回答に一致が認められた。このことから,モデルが,生徒の岩石の分類についての概念モデルを示していることが考えられた。したがって,本モデルによって生徒の回答を予測できることが考えられ,生徒の認識に即した科学的な分類の学習に,モデルを役立てていけることが示唆された。
  • 神原 陸男
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 29-36
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,平成元年の学習指導要領の告示以来,次第に新鮮さが薄れてきつつある「感性」という用語に新たな意義を吹き込み,これからの音楽学習のあるべき方向を具体的に提示しようとするものである。「感性」の新たな意義については,カントの先験的感性論から,感性と悟性をつなぐ「構想力」に着目し,感性が単なる感受性ではなく対象認識の入口としての思考力と直結していることを引き出した。更に,メルロ・ポンティの身体論から,感性が,対象認識の「まなざし」「指向弓」をもち,身体という統合体により世界と接しながら認識するという機能をもつことを引き出した。このことから,「感性の育成」が,「音楽の世界への価値を見出し,自らの音楽像を心に描く能力を更新すること」であると提言した。そのため,子供たちが本来もっている知的欲求に応じた「音楽の不思議の世界」等に関する題材構成が開発されるべきであることを具体例を示しながら提言した。
  • 山森 直人
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 37-46
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    これまでの英語教育研究では,指導方法や教材内容,あるいは政策的側面に焦点が当てられてきたが,各学校において実際に英語教育がいかに組織的に運営されているかという経営的側面にはあまり関心が払われてこなかった。本稿の目的は,英語科経営の組織特性と英語科成員のCommunicative Language Teaching(CLT)へのコミットメントとの関連を調査し,CLTの実践が活性化される英語科経営の組織特性を追求することを目的としている。結果として,(1)組織特性の6つの側面において学校間に違いがあること,(2)CLTの実践には学校間に差があること,(3)CLTの実践に有効に働きかけると考えられる組織特性は「管理職のリーダーシップ」「校内研修」「目標の共有・具現化」であること,などが確認された。
  • 塚田 秀也, 安東 茂樹
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 47-54
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,中学校技術科における生徒の感情の状況を把握するため,感情尺度の調査紙を作成し,生徒の感情を調査した。調査した結果から,次のことが明らかになった。(1)技術科において生徒は,感情の6要素である「喜び」,「悲しみ」,「恐怖」,「嫌悪」,「驚き」,「怒り」の中で,「喜び」を最も強く感じている。(2)男子生徒より女子生徒が,「喜び」以外の5つの感情要素を強く感じている。(3)学年が進むにつれて,生徒は「嫌悪」と「怒り」を強く感じている。(4)情報基礎領域で生徒は「喜び」を強く感じ,栽培領域で「恐怖」や「嫌悪」を強く感じている。領域別の男女比較では,機械領域で男子生徒が,情報基礎領域で女子生徒が「喜び」を強く感じている。また,栽培領域では男女の感情の差が全くない。(5)木材加工領域の指導法において,自由設計より既製設計の場合に生徒は「喜び」と「嫌悪」を強く感じている。
  • 三村 真弓
    原稿種別: 本文
    1999 年22 巻2 号 p. 55-65
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    大正期から昭和初期にかけて,我が国では,新教育運動が盛んとなった。それは進歩主義思想に基づいたものであり,児童の自律性・活動性を重んじるものであった。一方,音楽教育においては,唱歌科から音楽科への移行が始まり,教科としての系統的・論理的な確立が意識されるようになった。すなわち,大正期の音楽教育は,本質主義に基づいたものであったといえる。奈良女子高等師範学校附属小学校では,音楽教師の幾尾純による音楽の授業と,合科学習の中で行われる音楽学習との2つの形態が存在していた。そこでは,進歩主義に基づいた主事木下竹次と,本質主義に基づいた幾尾純との対立があった。その中で,合科担任教師の鶴居滋一は,児童中心主義の立場に立って,児童の自発的な学習を促しながらも,教科内容の獲得を目指した。鶴居の実践した児童作曲の授業は,進歩主義と本質主義との接点を見いだそうとした画期的なものであった。
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