日本教科教育学会誌
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奈良女子高等師範学校附属小学校合科担任教師鶴居滋一による音楽授業実践 : 進歩主義と本質主義との接点の探求
三村 真弓
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1999 年 22 巻 2 号 p. 55-65

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抄録
大正期から昭和初期にかけて,我が国では,新教育運動が盛んとなった。それは進歩主義思想に基づいたものであり,児童の自律性・活動性を重んじるものであった。一方,音楽教育においては,唱歌科から音楽科への移行が始まり,教科としての系統的・論理的な確立が意識されるようになった。すなわち,大正期の音楽教育は,本質主義に基づいたものであったといえる。奈良女子高等師範学校附属小学校では,音楽教師の幾尾純による音楽の授業と,合科学習の中で行われる音楽学習との2つの形態が存在していた。そこでは,進歩主義に基づいた主事木下竹次と,本質主義に基づいた幾尾純との対立があった。その中で,合科担任教師の鶴居滋一は,児童中心主義の立場に立って,児童の自発的な学習を促しながらも,教科内容の獲得を目指した。鶴居の実践した児童作曲の授業は,進歩主義と本質主義との接点を見いだそうとした画期的なものであった。
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© 1999 日本教科教育学会
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