抄録
本研究はピアジェ心理学の数学教育学的研究の一部を担うものである。ピアジェの数学的認識論の基本的立場であるところの操作的構成主義を考察し,そこから彼の数学教育上の理念を確認して見た。そして,自然数概念の発達に関する彼の理論を分析的に反省し,その教育的解釈を試みた。子どもの活動に訴える必要性は知能のメカニズムにその根拠がある。すべての知的活動の本質は操作であり,この操作は活動によって準備されるとき,はじめて実際に作用する。子どもの自然数概念の構成の為には,類と順序関係に対する活動を「操作的原理」に従って組織し,それを「教育課程前の教育課程」の形で与えて,「論理・数学的経験」をさせる必要性が切実である。その為にはCuisenaire rodsがすぐれた教具である。-というのが本稿の趣旨である。