抄録
本稿の目的は,ふり返り活動による解法の進展について,潜在的な数学的能力(中原,2002)を視点として実証的に検討することである。そのために,中学校2年生の生徒267名に対して,ふり返り活動を促す3つの実験群とふり返り活動を促さない統制群を設定し,解法に進展があるか否かを調べるための調査を実施した。その結果,次のような点が明らかになった。・高潜在力群の生徒に対しては,「別解・より良い解法の探求」に関わる処遇が有効であった。・低潜在力群の生徒に対しては,「解答・解法のチェック」「別解・より良い解法の探求」「解法の妥当性・一般化に関する検討」のいずれの処遇も有効で,とりわけ「別解・より良い解法の探求」や「解法の妥当性・一般化に関する検討」に関わる処遇が解法の進展に寄与した。また,低潜在力群では,ふり返りの促しなしでは解法の進展の生起は困難であることも示唆された。