日本教科教育学会誌
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30 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 清水 紀宏, 山田 篤史
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 1-8
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,ふり返り活動による解法の進展について,潜在的な数学的能力(中原,2002)を視点として実証的に検討することである。そのために,中学校2年生の生徒267名に対して,ふり返り活動を促す3つの実験群とふり返り活動を促さない統制群を設定し,解法に進展があるか否かを調べるための調査を実施した。その結果,次のような点が明らかになった。・高潜在力群の生徒に対しては,「別解・より良い解法の探求」に関わる処遇が有効であった。・低潜在力群の生徒に対しては,「解答・解法のチェック」「別解・より良い解法の探求」「解法の妥当性・一般化に関する検討」のいずれの処遇も有効で,とりわけ「別解・より良い解法の探求」や「解法の妥当性・一般化に関する検討」に関わる処遇が解法の進展に寄与した。また,低潜在力群では,ふり返りの促しなしでは解法の進展の生起は困難であることも示唆された。
  • 鈴木 洋子
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 9-15
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    これからの小学校における食育をより効果的に進めるには,家庭科を筆頭とする教科担当教員と栄養職員(教諭)の職域,職分に立脚した協力と連携が不可欠であることから,栄養職員の食育実践の現状と,教科担当教員と栄養職員(教諭)の連携を進展させるための課題を検討した。研究方法は,奈良県下の学校栄養職員を対象としたアンケート調査である。栄養職員の85%が食育を実践しており,勤務年数が長い職員や,比較的に規模の大きい学校に勤務する職員の実践率が高かった。小学校における栄養職員による食育実践は,特別活動と家庭科がそれぞれ3割を占め,教科の中では家庭科が一番多かった。栄養職員(教諭)の負担と低・中学年の食育の充実の観点から見直す必要がある。教科担当者と栄養職員の連携協力による授業づくりには,相互の理解が鍵になっており,指導担当者の職場の人間関係に児童の学習機会と質の均等院が左右される課題を表出した。
  • 原田 省吾, 芳我 清加, 佐藤 園
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 17-26
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    奈良プランにおいて,第4〜6学年の「けいこ-家庭-」では,技能の習得が目的とされ,その計画は『昭和22年度学習指導要領家庭科編(試案)』の第5〜9学年の内容から抽出された「衣・食・住・礼儀・其の他」の生活に必要な知識・技能と当時の教科書を基盤として立てられていると考えられた。その学習には,家事・裁縫科の教授法が持ち込まれていた。以上と第1報の結果を考え合わせると,奈良プランにおいては,『昭和22年度学習指導要領家庭科編(試案)』で目的とされた「開かれた家庭生活に関する認識」は「しごと」で,手段とされた「家庭生活に必要な技能」は「けいこ-家庭-」で習得するという家庭科学習の構造が存在していたことが明らかになった。
  • 谷田 親彦, 足立 泰彦, 上田 邦夫
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 27-36
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿は,情報教育の学習内容を多角的に検討することを目的として,中学校技術・家庭「情報とコンピュータ」に対する「興味・関心」「理解・自信度」及び「重要度」の構造を把握するための因子分析を行った。その結果,学習者の「興味・関心」は,「コンピュータ利用」「ネットワーク活用」及び「計測・制御とプログラム」で構成されており,そのうち「ネットワーク活用」の興味・関心が最も高かった。「理解・自信度」からは,「ソフトウェア活用」「情報と生活の関係」及び「ネットワーク活用」に関連する3因子が抽出され,そのうち「ネットワーク活用」の理解・自信度が高かった。「重要度」は,「情報処理の基礎能力」「情報の創造的加工」及び「情報の相互表現」から成る構造が認められ,た。「興味・関心」「理解・自信度」及び「重要度」から抽出された因子の相互関連性から,情報教育の学習内容は8つに類型化され,ソフトウェアの機能や用途により意識が相違することが推察された。
  • 山西 博之
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 37-46
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本論文は,CALL (Computer Assisted Language Learning)教室にて行った大学生に対するライティング指導において,Microsoft Wordのコメント機能,変更履歴の記録機能など(「コメントツール」と総称)を用いた添削活動がどのように受講者に認識されたかを報告するものである。著者は講座の授業担当者として,広島大学外国語教育研究センターの課外講座「はじめてのパラグラフ・ライティング」において,添削結果の提示に「コメントツール」を使用した。90分の授業時間は,「コメントツール」を媒介して,添削結果を授業担当者と学習者が個人的に直接対話する前半の50分と,その対話を受けてクラス全体にフィードバックを行う後半40分からなった。授業期間終了時に学習者に求めたアンケートの結果,このような指導は,学習者に好意的に受け止められていたことが確認された。
  • 平田 晴路
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 47-55
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    「中学校学習指導要領(平成10年12月)解説-技術・家庭編-」に記述されている人格形成にかかわる事柄の中で,「A技術とものづくり」,「B情報とコンピュータ」の指導内容によって育成されやすい程度に違いがあるかどうかを明らかにするとともに情報モラル以外のコンピュータ活用による人格形成を見いだすことを目的とした。23の人格形成項目を設定し,各項目について,対象を技術科教師と保護者として両内容別の育成されやすさを評定尺度を利用した質問紙法により調査した。両対象者は,性別・年齢に相違があったが意識はほぼ同様であった。両対象者の意識に共通した結果を次に示す。(1)全項目の内の約70%は,「A技術とものづくり」による方が「B情報とコンピュータ」によるより育成されやすいと考えられていた。(2)「B情報とコンピュータ」による方が育成されやすい項目として「社会の変化に主体的に対応できること」が見いだされた。(3)クラスター分析により「勤労観」は,「A技術とものづくり」による方が育成されやすく「B情報とコンピュータ」で育成されやすくないという性質が特に鮮明であることが明らかになった。
  • 栗田 裕子, 水落 芳明, 久保田 善彦, 西川 純
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 57-64
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,第一に,体育学習において教師の考える技能(本論では「体育技能」と呼ぶ。)から評価基準を作成した。第二に作成した評価基準を用い,学習者同士の相互作用を重視した活動が行われた授業における体育技能の向上を測定した。第三に,教師の手だておよび学習者の会話の特徴から,体育技能向上に関連する相互作用の実態を質的に分析した。その結果,体育教師は,小学校6年生のバスケットボールの学習では,4分のゲーム内で,総シュート数が20回あれば高い達成度と考えている。攻撃に有効な縦パスが30回以上あれば,高い達成度と考えていることがわかった。また,相互作用を重視した学習を行ったところ,体育技能の向上が見られた。教師の主な手だてである情報掲示板の設置は,相互作用を促し,体育技能の向上に効果的である。「体育技能」向上に関係している会話は,「アドバイス・励ましの会話」,「目標確認の会話」に整理できた。そこでは学習者どうしが学習状況を共有することで,共通理解が進み,体育技能の向上に影響したと推測できる。
  • Michelle Apostol Mendoza, 池[ザキ] 喜美恵
    原稿種別: 本文
    2007 年30 巻2 号 p. 65-73
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,2004年8月から12月にかけて,フィリピンと日本の中等教育段階の家庭科担当教師に調査を実施した。そして,フィリピンと日本の中等教育段階における家庭科教育の現状を比較することを目的とした。その結果,次のような知見が得られた。両国間にはカリキュラム,授業時数,生徒数,学習科目に特徴が見られる。また,調理関係の施設・設備については,あまり満足していない日本の教師が多いが,被服関係では,フィリピンの教師の方が,満足度は低い。両国とも,広い範囲の知識や技術的ノウハウを生徒に習得させるために同様な目的を提示している。しかし,フィリピンでは,生徒に職業に関するスキルの習得が養成されているのが特徴である。この比較研究は,両国の家庭科教育の深さを探り,家庭科の指導の改善を志向することに寄与できると思われる。
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