抄録
本研究の目的は,小学校理科の学習指導案の作成を支援するツールとして,「授業設計・評価マトリクス」を開発し,その効果を検証することである。開発したマトリクスは,時間,能力,評価基準の3つを軸として構成した。調査協力が得られた20人の小学校教師を,10人ずつマトリクスを使用する実験群と,マトリクスを使用しない統制群とに分け,2回分の理科の学習指導案を収集した。両群とも,1回目は従前に作成した学習指導案,2回目は新たに作成した同学年,同単元の学習指導案を分析対象とした。その結果,実験群の2回目の学習指導案において,想定した児童の反応の記述数が有意に増加した。さらに,実験群では高いレベルの児童の反応を想定することができた。このことから,「授業設計・評価マトリクス」は,小学校理科の学習指導案の作成を支援するツールとして効果があることが実証された。