抄録
本研究の目的は体育科教育における戦術・運動技術の認識に限定して授業実践レベルで問題となる認識対象の構造的特徴について明らかにすることにある。考察においては,まず授業実践レベルで問題となる認識対象を検討した数少ない先行研究である岩田靖や石田智巳の研究を検討し,両者の研究は認識対象となる戦術や運動技術の階層関係についての言及が不十分であることを明らかにした。次にその問題点を解消するためにスポーツ運動学の知見を参照しながら,戦術・運動技術に関する認識対象の構造的特徴について考察していった。考察の結果,各授業において教師が目標とする認識対象は課題-実態-方法の3つの側面が存在し,これらが戦術・運動技術の各階層(戦略-戦術-運動技術)に位置づいた構造をもつことが明らかにされた。またその構造的な特徴をモデル化して提示することができた。こうした戦術・運動技術の階層的構造をふまえた認識活動が組織されることで,次第に教師が単元を通して目標とする体系的認識へと到達していくと考えられる。