抄録
現在,教育のインクルーシブ化は喫緊の課題となっているが,インクルーシブ教育にとって重要とされる通常教育の改革は,いまだ進んでいないのが現状である。こうした問題意識から本稿では,通常教育の一環である国語科を取り上げ,特別な教育的支援を必要とする子どもと必要としない子ども両者の学びを見取りつつ,多様な学習者に対応するインクルーシブな国語科授業について,ある小学校教諭の授業実践をもとに検討した。その結果,(1)単元の目標を十分に設定しつつ言語活動を充実させる(2)学習目標(価値目標・技能目標)と活動目標に沿って,学習者の学びを総合的に評価する(3)自らの経験を学びの手がかりにする技能目標を設定し,経験と学びを結ぶ支援を行う(4)特別な教育的配慮を必要とする子どもとしない子どもが,多様な「わかる」「できる」を発揮することで相互に学ぶ場を仕組むことの4点が,インクルーシブな国語科授業に必要な条件であるとした。