日本教科教育学会誌
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40 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 保森 智彦
    2017 年 40 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,小学校における算数の授業観察における算数の指導者のPCK の特徴を経験年数との関連性から明らかにすることを目的とした。調査方法は,熟達者の算数の授業VTR を大学生や現職教師に視聴してもらい,インタビューを行い,発話プロトコルを分析した。その結果,教師は熟達するにつれて,教材解釈と授業者の意図推測が豊かになり,教材内容と児童の発言,教授方略を密接に関連付けながら授業者の意図推測をするようになると推察される。さらに,初心者は,授業の場面を児童と教師の発言や行動など表面的な現象で捉えるが,中堅教師になると教師の意図と児童の発言を関連付けた静的な状況モデルが構築され,さらに熟達すると,学習の前後の文脈に即して捉える動的な状況モデルが構築されると推察される。
  • ―「サーカスのライオン」の授業実践を手がかりに―
    永田 麻詠
    2017 年 40 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    現在,教育のインクルーシブ化は喫緊の課題となっているが,インクルーシブ教育にとって重要とされる通常教育の改革は,いまだ進んでいないのが現状である。こうした問題意識から本稿では,通常教育の一環である国語科を取り上げ,特別な教育的支援を必要とする子どもと必要としない子ども両者の学びを見取りつつ,多様な学習者に対応するインクルーシブな国語科授業について,ある小学校教諭の授業実践をもとに検討した。その結果,(1)単元の目標を十分に設定しつつ言語活動を充実させる(2)学習目標(価値目標・技能目標)と活動目標に沿って,学習者の学びを総合的に評価する(3)自らの経験を学びの手がかりにする技能目標を設定し,経験と学びを結ぶ支援を行う(4)特別な教育的配慮を必要とする子どもとしない子どもが,多様な「わかる」「できる」を発揮することで相互に学ぶ場を仕組むことの4点が,インクルーシブな国語科授業に必要な条件であるとした。
  • ― 健康情報の批判的思考尺度得点の推移分析 ―
    山本 浩二, 渡邉 正樹
    2017 年 40 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学生を対象とした健康情報リテラシーを育てる保健授業を開発し,その効果を縦断的に追跡調査することである。国立大学附属中学校の生徒を対象に,1年2学期と約1年後の2年2学期に健康情報リテラシーの授業を実施した。これらの授業では筆者らが開発した健康情報評価カードを用いた。そして,授業効果を測定する尺度として,「健康情報の批判的思考尺度」 を用い, 2回の授業前後計4回の尺度調査を実施した。その結果, 第1回目の授業前に比して授業後に上昇した尺度得点は, 1年後には低下したが, 第2回目の授業後には, さらに上昇し, 計4回の中で最も高い尺度得点となった。健康情報リテラシーを育てる授業は, 約1年の間隔が開いても,2度実施することによりフォローアップの効果があることが認められた。
  • 河内 昭浩
    2017 年 40 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学校国語科で指導すべき各教科の学習語彙を明らかにすることにある。各教科の学習語彙を,国語科で指導することが重要であると考えている。ここでいう学習語彙とは,各教科の専門用語ではない。「教科の内容理解に不可欠で,かつ日常的にはあまり使われない,しかし,一般社会で生きていくために重要な語彙」を,学習語彙とした。語彙の選定のために,まず「中学校教科書コーパス」を作成した。そしてコーパスを基に「中学校学習語彙表」を作成し,語彙を抽出した。語彙の抽出には,特徴度と語彙レベルの指標を用いた。そして教科ごとに語彙の一覧表を提示した。さらにいくつかの語について,教科書の文例を提示した。本研究の意義は,コーパスという客観的資料を用いて語彙を選定した点にある。そして特に,複数の教科で用いられる語,各教科の専門用語とともに用いられる語,語彙指導等の場面で有効な語について,国語科で指導すべきとの考えを示した。
  • 本郷 健, 本村 猛能, 山本 利一, 齋藤 実, 永井 克昇
    2017 年 40 巻 1 号 p. 45-58
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本論は,高等学校における共通教科情報科が育成したい固有の資質・能力を,日本学術会議が提案する「新しい学術の体系」やイギリスのICT 教育の改訂を支える考え方等の考察を通して,一つの試案として提示するものである。本提案では「情報を軸としてさまざまな事象を捉えようとする見方・考え方の育成」を「情報的な見方・考え方の育成」と呼ぶ。「情報的な見方・考え方」の定義では,日本学術会議が提案する「認識科学」や「設計科学」の領域を基礎として,各領域の下に情報的な見方・考え方の中心概念を配置する構造化を行った。本提案が採用した手法は,「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会―論点整理― 」において主張された手法であり,その手法に基づいて構造化された本提案は,共通教科情報科が育成したい固有の資質・能力の具体的な試案と位置づけることができる。
  • ― 自己決定理論における動機づけに着目して ―
    西内 舞, 川崎 弘作
    2017 年 40 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,自己決定理論から動機づけを捉え「理科学習の意義の認識」が「動機づけ」にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。そのためにまず,学習者が認識している「理科学習の意義の認識」と「自己決定理論における動機づけ」を測定するための質問紙を検討,作成した。次に,中学生を対象にこれらの質問紙による調査を実施し,調査結果を基に理科学習の意義の認識が動機づけにどのような影響を与えているかについて共分散構造分析により明らかにした。その結果,理科学習を通して,学習者自身が,「理科学習の意義の認識」を「科学的能力」が身に付くと捉えると,「内発的調整」,「同一化・成長」の動機づけに正の影響を与え,「外的調整」には負の影響を与えていることが明かになった。また,「理科学習の意義の認識」を「科学と身近な自然や日常生活の理解」と捉えると,「内発的調整」,「同一化・成長」,「同一化・将来」の動機づけに正の影響を与えていることが明かになった。
  • ― ESD(持続発展教育)を視点とした家庭科教育内容開発研究 ―
    篠原 陽子, 越宗 久美子
    2017 年 40 巻 1 号 p. 69-83
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    子どもは持続可能な衣生活のために環境条件に応じた衣服の着方を意思決定しなければならない。近年問題となっている紫外線による人体への影響を軽減するために,衣服による紫外線対策を学ぶ教育内容の開発を試みた。紫外線対策の必要性と日常生活における衣服による紫外線対策に関する内容が必要となり,本研究では環境条件( 季節, 天気, 場所) の違いによる衣服の紫外線透過を明らかにし,子どもが活用可能な測定法を検討した。主な結果を示す。(1) 衣服は紫外線の透過を低減する。紫外線の透過は布地の緻密さや厚さ, 色の明度が関係する。(2)これらの特性をもつ試料布ならびに衣料において,晴天・屋外では衣服の紫外線透過率は高かった。春季は紫外線量が多く透過量も多かったが,季節による有意差は認められなかった(ANOVA,p<0.05)。紫外線対策は夏季に盛んに行われるが,冬季,春季も必要である。(3) 衣服の紫外線透過量を定性的に調べる方法としてUV ラベル(紫外線インジケータ)の超高感度ラベルの活用が有効であった。得られた知識をもとに,子どもは持続可能な衣生活を目指した意思決定が可能になると期待される。
  • ― 特に中学校理科の内容理解に関連して ―
    花野木 政信, 磯崎 哲夫, 林 武広
    2017 年 40 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    大学進学を目指す高校生が文系・理系の選択をどの時期にどのような要因で行うか,文系選択者が中学校理科のどの単元で学習に困難を感じているかを明らかにするために,中学校3年生~高校2年生(N=307),高校1年生,2年生(N=503)を対象に2種類のアンケート調査を行った。その結果,中学校3年生から高校1年生の時期に文理選択をする生徒が多いこと,教科の得意・不得意がコース選択の大きな要因となっていることが分かり,特に中学校段階での数学,理科の学習が重要であることが分かった。文系と理系の比較では,文系選択者の方がコース決定時期が遅く,得意・不得意教科の偏りも大きいこと, さらに文系選択者の場合,理科については割合の計算を含む内容および,不可視な現象に関する内容への理解に課題を有することが明らかとなった。
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