抄録
本稿では,幼児期の年長から小学校低学年までを接続期とする認識に基づき,接続期における子どもの学びの連続性を活かす授業の工夫について,小学校2年生の生活科の授業場面を事例として取り上げ,幼保での経験知に焦点を当てて分析・考察した。このことにより,生活科授業を実践する際に子どもたちの幼保での経験を起点にすることの意義について次の3点が明らかになった。第1に,幼保での経験を起点にする授業では,子どもたちが幼保で得た経験知を活用できるため,経験知を土台として学びを広げたり深めたりすることができる。第2に,幼保での経験を起点にする授業では,教科書の見本のような最終目標の形が明示されていないため,次々にアイデアを更新しながら活動を続けることができる。第3に,幼保での経験を起点にする授業では,「経験したことが楽しかった」という感覚的な経験知が活動への取り組みを促す刺激となり得る。