日本教科教育学会誌
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説明的文章の批判的読みの授業実践の展開
― 学年段階と年代に焦点をあてて ―
村井 隆人
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2018 年 41 巻 1 号 p. 47-57

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抄録
本研究の目的は,近年増加しつつあるといわれる説明的文章の批判的読みの授業実践の展開を明らかにし,その成果と課題を明らかにすることである。1995年から2014年までの授業実践を分析した結果,論証の中でも事実を批判する実践が重視されていること,高学年以降は修辞も重要な対象となり,質的な変化が中学校でみられることが確認できた。2005年以降の展開としては,全体的な傾向は変わらないものの,中学校における実践の増加と多様化が確認できた。実践の増加については,PISA 調査とそれを受けた一連の教育政策の影響が一因として考えられた。多様化については,指導のしやすい対象の実践がみられるようになったことや,批判的思考研究の知見の受容が要因として考えられる。授業実践の課題として,事実への批判に留まりがちで論拠を対象とした実践が望まれること,批判的読みにおいて重要となる合理性と反省性の統合という観点からメタ認知的能力を扱った実践が少ないことを指摘した。これらの課題を受けて,論拠やメタ認知を扱った実践の特徴を分析し,授業実践の展望とした。
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© 2018 日本教科教育学会
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