本研究は, 小学校社会科授業における価値判断の分析対象,およびそれらによって形成される子どもの価値判断基準について明らかにするものである。主体的な社会の形成者の育成を目的として,価値判断や合理的意思決定を取り入れた社会科授業が行われるようになってから久しい。このような流れを受けて,小学校社会科授業においても徐々に価値学習が取り入れられつつある。しかしながら,論争問題が実際の生活の文脈に位置付けられていなかったり,表層的常識的な価値判断にとどまったりする場合が往々にしてみられる。本研究では,社会的事象や判断を規定する価値に気づき,自明視していた社会的事象を批判的に分析し吟味できる多面的な価値判断基準を形成することを目的とし,「選択・判断」の結果としての社会的事象を分析する授業構成について提案した。この授業構成原理をもとに,実際に授業実践を行った結果,価値判断の分析対象を言説に置くか,判断基準に置くか,調整された価値に置くかによって,子どもに形成される価値観は異なることが明らかとなった。