抄録
本研究のねらいは,省察マトリクス(保森,2018)を用いることによって,学習者の自律的な学習の側面から小学校教師のPCK の変容を検証することである。調査対象は,小学校の算数の指導をしている初任教師1名であった。調査方法は次の通りである。教師は,自分の算数の授業VTR を視聴しながら調査者からインタビューを受けた。その後,教師は省察マトリクスを用いて省察した。その後,2回目の算数の授業実施後,VTR を視聴しながら,再びインタビューを受けた。分析結果は次の通りであった。(1)省察マトリクスを用いることによって,2回目の授業中の初任教師は,学習者の個性や自律的な学習を意識して授業を行った。(2)半年が経過し,担当学年が変わると,学習者の個性や自律的な学習に対する教師の意識は維持されなかった。