抄録
本研究の目的は,アメリカにおける各州の芸術科ダンス領域のスタンダードの設定状況及び教科内容の特徴を明らかにすることであった。1994年から2013年までに発刊された各州のスタンダードの設定状況を確認し,ナショナルスタンダードの教科内容に関するスタンダードと比較した。その結果,以下のことが明らかになった。1) 独立した教科としてダンスを扱っている州は半数程度であり,ダンスは独立した教科としては不安定な位置付けであること。2) ナショナルスタンダードの教科内容をそのまま受け入れている州は十分の一程度であること。中でも,比較的多く記されていた教科内容は,「文化的,歴史的な文脈」「批判的,創造的な思考」「動きの要素や技能」であり,「健康的な生活との関連」は比較的少数であった。このことから,州のダンスのスタンダードは芸術としてのダンスを志向した教科内容を重視する傾向にあることが明らかとなった。 この要因として,教科の枠組み,ダンスの授業を担当する教員や施設条件に加え,体育のフィットネス志向の影響が示唆された。