日本教科教育学会誌
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42 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 国語教育科のカリキュラムと教授任用に注目して
    尹 瑩仁
    2019 年 42 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    韓国では,国が実施する教員養成機関評価が師範大学の教科教育科のカリキュラム編成と教授任用に変化を与えたとの指摘が多いものの,具体的にその関連性を探った研究はない。そこで,本研究は評価を概観し,国語教育科を対象にその事実上の関連性を明らかにすることを目的とした。教員養成機関評価には,教科教育科のカリキュラム構成や教授任用についての評価項目が含まれていて,評価の実施前と現在の国語教育科の状況を比較すると,教科教育学的に大きな進展があったと言える。しかし,具体的に各周期の評価指標と国語教育科のカリキュラムと教授の専攻の割合の推移を確認及び比較すると,毎周期別の指標が具体的かつ直接的に影響を与えてきているとみるよりは,2000年前後に大きく影響を及ぼしたことは認められるものの,その後の変化は,教員養成機関評価だけの影響と断定するのは難しく,国語教育科の学問的な成立の流れなど,他の要因があると考えられる。
  • FUER 歴史意識プロジェクトのコンピテンス・モデルに基づいて
    宇都宮 明子
    2019 年 42 巻 2 号 p. 13-23
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,FUER 歴史意識プロジェクトのコンピテンス・モデルと歴史科における他のコンピテンス・モデルとの比較考察を通して,日本の社会科学習指導要領をアウトカム志向のスタンダードへと転換するための示唆を得ることを目的とする。 FUER のモデルの分析から,本モデルは歴史的思考過程に関連する4つのコンピテンス領域からなり,歴史的思考過程を促進し,歴史意識を育成する構造であることを明らかにした。本モデルとドイツを代表するモデルの比較考察から,FUER のモデルが理論的考察にも実践的考察にも耐えうる有効性を保証した優れたモデルになっていることを解明した。 本稿での考察から,日本の社会科学習指導要領をアウトカム志向へと転換するために,モデル導出の根拠,モデルの汎用性のレベル,コンピテンス領域やコンピテンスの設定,モデルの構造という論点を抽出することができた。
  • 授業観察とインタビューを通して
    兼重 博美, 菅 裕
    2019 年 42 巻 2 号 p. 25-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    音楽科授業における熟練教師の思考過程の特徴と,それを支える信念との関連性を明らかにすることで,教師の熟達化を促進する要因を明らかにすることが本研究の目的である。熟練教師1名(宮崎県公立小学校教諭・女性・教職経験年数29年目)の授業観察とインタビューを通して,授業観や教育観と授業中の指導内容との関連について分析を行った。分析結果から,1.児童の行為・言動,2.受信,3.意味生成,4.再構成,5.発信からなる熟練教師の思考過程モデルを得た。このモデルにもとづき,教師の熟達化を促進する要因として1.受信,発信を,身体を通した過程として捉え,その技術を磨くこと,2.教科に関する知識や指導法等について学び続け,信念を構築すること,3.意味生成の過程において創造的協同性(creativecollaboration)を実現するための能力を身に付けることを提案した。
  • 第5学年「ふりこの運動」における事例から
    林 康成, 三崎 隆
    2019 年 42 巻 2 号 p. 35-42
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,学力下位層が,end user からgatekeeper になる経験の有無の違いによる学力向上との関係とその要因を解明することを目的とする。そのために,小学校理科の第5学年「ふりこの運動」において,gatekeeper になる経験をした学力下位層と経験をしない学力下位層の単元学習前に行った事前テストと単元終了直後に行った事後テストを比較した。その結果,次の2点が明らかになった。第1に,gatekeeper になる経験をした学力下位層は,経験をしない学力下位層より事後テストの得点が高い学習者の割合が多い。第2に,gatekeeper になる経験をした学力下位層は,その経験と事後テストの結果に関係があり,その要因を,友達に教えるために自分の分からなさに気がついたり,よく考えたりすることによって分かることにあると認識している。
  • 青山 聡
    2019 年 42 巻 2 号 p. 43-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本論の目的は,複数回与える筆記による訂正フィードバックが,同じ英作文の書き直しにおける自己訂正率と別の新しい英作文における正確さにどのような影響を与えるのかを仮定法と直説法に焦点を当て調査することである。高校2年生110名を英語熟達度に応じて2群に分け,それぞれの群で直接的訂正フィードバック(DCF)群,メタ言語的訂正フィードバック(MCF)群,統制群を設定し,相対的効果を検証した。その結果,熟達度高位群では,DCF とMCF 共に書き直しへの効果が確認されたが,新しい英作文には確認されなかった。一方,熟達度低位群では,DCF は書き直しに対してすぐに効果を及ぼしたが,新しい英作文における正確さの向上はもたらさなかった。しかしMCF は,与えるごとに書き直しにおける自己訂正率を向上させ,3度目にはDCF と同程度の自己訂正率を獲得した。さらに新しい英作文では,2度目を与えた後の事後テストにおいて,DCF と比較し,正確さの向上を導いた。
  • 各州のスタンダードに着目して
    大西 祐司, 岡出 美則
    2019 年 42 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,アメリカにおける各州の芸術科ダンス領域のスタンダードの設定状況及び教科内容の特徴を明らかにすることであった。1994年から2013年までに発刊された各州のスタンダードの設定状況を確認し,ナショナルスタンダードの教科内容に関するスタンダードと比較した。その結果,以下のことが明らかになった。1) 独立した教科としてダンスを扱っている州は半数程度であり,ダンスは独立した教科としては不安定な位置付けであること。2) ナショナルスタンダードの教科内容をそのまま受け入れている州は十分の一程度であること。中でも,比較的多く記されていた教科内容は,「文化的,歴史的な文脈」「批判的,創造的な思考」「動きの要素や技能」であり,「健康的な生活との関連」は比較的少数であった。このことから,州のダンスのスタンダードは芸術としてのダンスを志向した教科内容を重視する傾向にあることが明らかとなった。 この要因として,教科の枠組み,ダンスの授業を担当する教員や施設条件に加え,体育のフィットネス志向の影響が示唆された。
  • 小学校第4学年理科授業の事例分析を通して
    松田 雅代, 溝邊 和成
    2019 年 42 巻 2 号 p. 65-76
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,メタ認知的道具としての特質を明らかにしてきた児童用学習ツール(CognitionMap)において,概念保持にかかわる一つの指標としての自信度の記入を試み,授業過程における概念と自信度の関係ならびにその変化過程をとらえることを目的とした。 その結果,自信度の変化において,最初に正概念を有する児童には,いくつかのパターンが見られた。最初に正概念をもっていても,自分の考えに自信をもっているとは限らず,学習過程の進行に伴い,自信度を変化させることがわかった。最初に誤概念を有する児童も同様に,様々な変化パターンが見られた。最初に誤概念を有する児童には,正概念に変わってからも自信度の揺れているパターンが見られた。 また,「矛盾する事象」と「科学的概念を裏付ける事象」の経験を含めて,自ら行う実験が概念の変容契機と自信度向上等につながっていたことが示唆された。
  • 汎用的スキル,態度・価値の変容を中心に
    藤川 和俊, 藤田 智子, 大竹 美登利
    2019 年 42 巻 2 号 p. 77-88
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学校家庭科における洗剤の選択に関する授業を分析し,授業を通して生徒のどのような汎用的スキル,態度・価値が変容したのか,またそうした変容はどのような汎用的スキル,態度・価値の影響を受けて起こったのかを明らかにするものである。2016年7月~10月に実施した質問紙調査を用いて,単元前後の得点を対応のあるt 検定によって比較するとともに,重回帰分析により因子間の関係を検討した。その結果,授業を通して全体では態度・価値の「協力しあう心」の得点が,男子では汎用的スキルの「協働・メタ認知力」と態度・価値の「より良い社会への意識・好奇心・探究心」の得点が向上したことが明らかとなった。また,単元後の「協働・メタ認知力」には単元前の「協力しあう心」が,単元後の「よりよい社会への意識・好奇心・探究心」と「協力しあう心」には単元前の「批判的思考力」と「協働・メタ認知力」が影響を与えていたことが明らかになった。
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