2022 年 45 巻 2 号 p. 1-11
本研究では,小学校中学年説明的文章の読解における反証に着目した批判的読みの様相とその形成過程を明らかにし,実践的示唆を得ることを目的に実際の学習者を対象に授業実践を行った。学習者の感想記述の量的分析から,批判的読みが可能になる水準に到達した学習者数の有意な増加が認められた。また,その過程における学習者の発話と記述の質的分析から,反証が,筆者の主張の前提条件として作用していることを読む姿が見られた。さらに,前提条件を変化させることで,多様な論理展開が可能になることを自覚化し,反証は,筆者の主張の説得力を増す機能があることを方略的に読む姿も見られた。以上の分析結果から,小学校中学年における反証に着目した批判的読みは,「多様な論理の可能性の自覚化」や「筆者の主張の説得力を増す機能をもつことを方略的に読むこと」が可能となる段階であることが示唆された。